家出娘を信じられない母親の心理
この前といってもちょっと時間が経ってしまったけど、ラジオを聞いていたら久々に良い電話相談があった。回答者はカウンセラーの田岡由伎(たおかゆき)さん。
お母さんからの電話で「娘が出会い系にはまってしまい家に帰ってこない」という相談だった。叱っても何をしてもぜんぜん帰ってこない。出会い系なんて危険がたくさんなので行かないでほしい。家に居て欲しい。
よくある話ではあるだろうけど、さてどう返すのだろうと興味津々。田岡さんは一通り話を聞いたあと唐突に自らの娘時代を話し始めた。
私も娘時代はよく家出をした。家に帰らないことも、ものすごく遅くなって家に帰ることすらもあった。
まったく何も回答せずに、自分も家出娘だったと言い、そしてこう続けた。
ある日、すごく遅く帰ると母親が起きていた。怒られると思った。
でも母親は決して怒らずお帰りと言った。
「起きて待ってたん?」と訊ねると「用事あっタンよ」とだけ答え、安心したようにそのまま布団へ向かった。
心配してたとも、どうして帰ってこないんだとも、ましてこんな遅くまで何をしてたんだとも言わず、ただ用事があったから起きていただけだという母親。田岡さんはここが自分の居場所なんだと感じすごく安心したんだという。
心配なのは母親の勝手。年頃の娘にしてみれば、がみがみと言われれば「家には居場所がない」と感じてしまう。居場所がないと感じればますます家に寄りつかなくなってしまう。そうではなく、どこでどんな辛いことがあっても、いつでも帰ることのできる場所であってほしい、家というのはそういう場所になってほしいと田岡さんは力説していた。
細かい部分は忘れてしまったけどもニュアンスとしてはこんな感じだった。これを聞いて「流石だ」と感心するばかり。この手の電話相談は、回答者がダメだと大抵ロクなことにならず、相談者が困惑したまま電話を切ることも多い。今回相談したお母さんも完全に納得はしていなかったようだけども、相談のあとに娘を受け入れるというアドバスをきちんと実行していれば事態は確実に好転する。
よく子供が危険な情報にふれることを怖がる親がいる。世の中の汚いことを隠し、競争を隠し、特定のテレビ番組を有害だといい見せたがらない。子供が自分の知らないところで遊んでいれば悪いことをしているんだろうと決めつける。子供をバカにするにもほどがある。親が思っている以上に、子供は親のことを冷静に見ているし、世の中の嘘もみんな分かっているし、テレビがフィクションであることも承知している。大切なのは隠すことはじゃない。むしろ体験し経験させた上で、それでもその先の道を示すことだ。
もし悪いものに影響されたらどうするんだというのは、自分の子供がその程度のくだらない悪いモノに簡単に影響されると考えていることになる。要するに子供のことを信じていないからそういう思考になる。親が子供を信じないで誰が子供を信じる。ある時期を越えたら、一人の人間として信頼関係を築き、互いに信じられる仲になる努力を親は真っ先にするべきだ。