みかんねこの不器用なのら~

不器用な人間が不器用なりに感じたことを語ってみるブログ

「綺麗に使って頂き…」に見る通販番組のロジック

結構有名な話なので知ってる人も多いと思いますが、一昔前はよく「一歩前に進んでください」とか「汚さないでください」って書いてありました。でも最近は「綺麗に使っていただきありがとうございます」って書いてある。

どうしてこう変わったのか。人は「○○してください」って言われると拒否をしてしまうからです。親しい友人ならともかく、どこの誰ともわからないものにそう言われても拒否するでしょう。だからお願いせず、しかも感謝の言葉を書いてあります。これは簡単に拒否されないためのトリックです。

例えばTVのCMで「この商品を買ってください」と言っているのを見たことがありますか? 通販番組で「買ってください」と言っているのを見たことがありますか。普通間違ってもそんなものは作りません。「買ってください」→「嫌です」と拒否されるからです。

実際にCMはどうなっているか。特に優れていて有名なのがジャパネットたかたです。たかたの商品紹介には特徴があって、ほぼ必ず実際にどのような状況で使用するか具体的に訴えています。

  • カメラのズーム機能は「運動会でのお子様の撮影」
  • 夜撮影に強いデジタルカメラは「猫や小さいお子さんの撮影」
  • エアコン/空気清浄機は「花粉症対策」

人は商品そのものやその特徴にお金を払うのではなくて、それを使用することによって得られる幸福感を求めてお金を払います。ジャパネットたかたの販売員や社長はそこを非常によく心得ている。


この話が「お願いしない」というキーワードとどう繋がるのか。それはどちらも無意識に働きかけているということです。無意識というのは日頃私たちが思考している「意識」の奥に潜む基礎的な感情みたいな部分で、無意識という核を(表層)意識が覆っています。

私たちは普段「意識」で思考することで行動を決定していると勘違いしていますが、人の行動を絶対的に支配しているのは無意識の方です。「意識」は「無意識の指図」で動いているにすぎません。つまり、相手に何かをしてもらおうと思ったら無意識に積極的に働きかけなきゃいけない。そんな無意識ですが、その原始性故に実はとても傷つきやすく他から影響されやすいという特徴があります。だから意識が無意識を守るように覆っているわけです。

なぜお願いすることが効果的でないかのか。「お願い」というロジックは表層意識に拒否されて無意識まで届かないからです。「綺麗に使っていただきありがとうございます」だと、どこにも指示が含まれないので(多くの人で)表層意識を通過して無意識に届きます。だから効果がある。この言葉が「プレッシャーに感じてしまう」という意見がありますが、これこそ自然と無意識に働きかけた証拠です。

ジャパネットたかたの手法が優れているのは、商品を使用している状態を徹底的にそして視覚的に訴えていることです。このときのイメージや想像というのは無意識が行うことなので、そこに幸福が感じられれば購買意欲を誘います。

こんな感じで世の中の広告や情報メディアを「表層意識をいかに掻い潜り無意識に訴えかけるか」という視点で見ると他にも色々と面白いことが見つかります。



そういえばさっき選挙カーが「よろしくお願いします」って通ったけど、あれは「お聞きいただきありがとうございます」ぐらいにしたらいいんじゃないだろうか?